
#キニナッタ【倉敷市】地域おこし協力隊・高石真梨子さんインタビュー
「誰かの役に立つことができるのであれば、書く仕事を続けていきたい」
そうお話するのは、2023年12月に倉敷市地域おこし協力隊として移住された、高石真梨子さん。
宮城県仙台市出身。親の仕事の関係で引っ越しが多く、中学高校時代は福岡へ。
その後大学は宮城、兵庫の大学院に進み、東京で特別支援学校の先生として5年半ほど勤めていました。
聴覚障がいのある高石さんが、なぜ倉敷へ移住しようと思ったのか。
地域メディアで“書く”ことを通して広がっていった、仲間たちとの出会いとは。
音の世界と音のない世界の狭間で生きる、高石さんのストーリーをご紹介します。
目次
ミッションは移住検討者向けの情報発信
倉敷市地域おこし協力隊として2023年12月から活動を始めました。
「くらしき移住定住推進室」に所属し、受け入れ団体は「一般社団法人はれとこ」です。今は、はれとこが運営するWEBメディア「倉敷とことこ」でライター兼エディター(編集)のお仕事をしています。

撮影:まつこ
地域おこし協力隊としてのミッションはふたつあって、まずは県外の移住検討者の方に向けたWEBを通した情報発信。もうひとつは、移住関連イベントへの協力です。
主に、「倉敷とことこ」の記事と個人のInstagramやnoteを通して、情報発信に力を入れています。
楽観的過ぎる性格です。実は、この10カ月間で家のカードキーを3回家に忘れて、警備会社に3回もお世話になっています(笑)
好きなことは、旅行をすること。
国内だと、沖縄と鹿児島以外は全部行きました。温泉の多い東北出身のため、温泉目的で旅行することが多いですね。

写真提供:高石真梨子
妹が2人いるのですが、上の妹は書道ガール、下の妹は音大のピアノ科へ行っていて。私はだいたいのことは75点位でできるんですけど、特に得意なことがない。一芸がないことがコンプレックスです。
書くことは、自分のメンテナンスをするために必要で、歯磨きやストレッチのようなもの。日々、欠かせないものですね。
昔からずっと書くことは好きで、個人でnoteに文章を書いていました。
好きなことが仕事になる世界線は気になっていたので「書くことがいつか仕事になったらいいな」ということを周りに漏らしていたんです。
2023年に、倉敷に住む友人から「所属メディアでライターを募集するけど、移住できるなら倉敷へ来ない?」というお誘いをいただいたんです。
東京での生活も5年を過ぎ、そろそろ次のステップに進みたい。落ち着いた環境で暮らしたい、と思っていたタイミングだったので、気持ちも前のめりになりました。
けれど、まだその時には不安もありました。聴覚障がいのある私が、インタビュー取材やメディアのメンバーとコミュニケーションを円滑に行えるかどうか。
そのため、面接前に所属ライターである友人と、受け入れ団体である「一般社団法人はれとこ」代表の戸井さんとzoomでお話する時間を設けてもらいました。
インタビューでは、補聴援助システムや音声認識アプリを使いながら、必要な場合は編集部のメンバーが取材同行すること。また、メンバー間のコミュニケーションはSlack(スラック)を使ったテキストが主になることを確認でき、安心することができました。

写真提供:高石真梨子
記事を読んでみていいなと思った「倉敷とことこ」は、倉敷だからこそある地域メディア。だから、倉敷へ移住したいと思ったんです。
会って元気になれる人と、一緒にいるために
実は、プライベートでは細かいことを気にする、ネガティブなタイプなんです。
夜中に突然目が覚めて、その日言われたことが急に気になったり。
プライベートで仲良くしたいと思う人は、会って元気になれる人が多いんです。古性のちさんもそのうちのひとり。お話をしていて、おだやかになるんですよね。

写真提供:高石真梨子
でも、その人たちと一緒にいるためには、相手にもそう思ってもらわないといけない。ネガティブな人たちと愚痴を喋るよりは、ポジティブな人と今考えている楽しいことを共有したり、今後やりたいことを話すほうが好きだと感じたんです。
なので、人と会う時間はできるだけポジティブな自分になろうと思うようになりました。

写真提供:高石真梨子
現在の協力隊のお仕事は、家でしかめっ面で執筆時間にあてる一日もあれば、外で人と会って笑顔でコミュニケーションを取る日もある。そういうスケジュールの調整が自分でできることも合っていると思います。

写真提供:高石真梨子
私にそんな二面性があることを受け入れ団体も理解してくれているんです。外出が続いていると、上司である戸井さんが「最近、外に出過ぎじゃない?」と声掛けしてくれて、とてもありがたく思っています。
話がきちんと伝わる。安らぎの場所が増えた
大学では、聴覚障害教育専攻にいて、前職ではろう学校(特別支援学校)に勤めていたので、聴こえないことに理解がある人ばかりの環境でした。
倉敷では、自分が何ができて、何ができないかを説明しなければ理解してもらえないこと。周りがどこまでわかっていないのかが、わからない。そこに関しては、戸惑うことがありました。
以前は、仕事としてして聴覚障がい者と日々関わっていたので、プライベートで当事者団体と関わることはあまりありませんでした。
そのため、移住するまでは岡山に聴こえない友だちはいなかったんです。けど、自分が情報発信をしていることによって、同じ仲間たちが気付いてくれて、友だちが増えました。

写真提供:高石真梨子
倉敷市役所にも当事者の人たちが働いていて、お昼にランチ会で集まっています。そういう場で、手話を通して思いっきり話をして、お互いに話がちゃんと伝わる嬉しさを感じていて。ふらっと輪に入れてもらえて、感謝しています。

撮影:まつこ
今(2024年9月末)まで、およそ55記事を書きました。どれも大切な記事ばかりです。

写真提供:高石真梨子
その中でも特に印象に残っているのが、障がいのある当事者と介助ボランティアがグループを作って、目的地を観光する列車・ひまわり号乗車レポートの記事です。
主催団体の方が私の記事を読んでくれて「高石さんに記事を書いてほしい」と取材依頼が入りました。自分の活動を見てくれて声をかけてくれて、とても嬉しかったです。

写真提供:高石真梨子
私自身もボランティアスタッフも兼ねて参加したのですが、当事者も支えられる側だけでなく支えられることができるということを知ってもらえたのも良かったことのひとつですね。
ポジティブで楽観的に、生きてほしい
まずひとつ目は、聴覚障がい者と関わりがなかった人や障がい者向けのメディアではないところが、当事者に配慮するようになったことです。
今年度から「倉敷市民レポーター教室」や「高梁川流域ライター塾」では、障がいの有無にかかわらず市民の手で、住民目線で地域の情報発信を増やすことを目的とし、できる限り情報アクセシビリティに対応するようになりました。
具体的には、アーカイブ動画の字幕付与や字幕テキストデータの提供などです。
オンライン講座で聴こえづらい人でも、今回から字幕を付けることによってハードルが下がったと思います。両講座とも、実際に聴覚障がいのある当事者が受講してくれているんです。私たちの試みが誰かの行動のきっかけになっていることを実感できて嬉しいです。
また「キニナッタ」さんを含め、福祉ニュースなどを取り扱うメディアではないところが、一人の地域おこし協力隊として「高石真梨子」をおもしろいなと思って、取材してもらえたことも良かったことのひとつ。
紹介したいと思ってもらえたことが嬉しいです。
聴こえない地域おこし協力隊はおそらく全国初のようなので、聴こえない人にも「地域おこし協力隊」になることが選択肢のひとつになったらいいなと思います。

写真提供:高石真梨子
倉敷は“聴こえない”地域おこし協力隊を受け入れてくれた。私が定住して暮らしていくことで、私のかわいい聴こえない後輩たちの選択肢として考えてもらえたら嬉しいし、自分も楽しく生きていけたら幸せ。なんだか壮大な話になっちゃいましたが(笑)
みんなポジティブに、楽観的に生きてほしいです。
生活を積み重ねる。定住する地となれば

写真提供:高石真梨子
私にとって書くことは、ストレッチみたいなもの。心身を整えるためにはすごく必要なことなので、仕事にしてみて書くことが嫌いにならなくてよかったと思います。
書くことで誰かと誰かをつなぐキッカケになって、役に立つことができたら、これからもこの仕事を続けていきたいと考えています。
そうですね…。これから私は何をするんでしょうか(笑)
今の仕事のおかげで、色々なイベントに行かせてもらって、旬のことを感じて伝えることができているので、倉敷の生活を着実に大切に、積み重ねていけたらと思いますね。

写真提供:高石真梨子
また、今まで転々と移住してきているので、定住する暮らしに憧れがあります。長い目で見て、倉敷が定住する地になればと思います。
インタビューを終えて
高石さんと初めてお会いしたのは、2024年の2月の「六島フォトウォーク」でした。共通の友人の紹介がキッカケです。
いつも笑顔で前向きな言葉に勇気づけられ、今回インタビューの実現に至りました。
「書くことで、何気ない1日にも新しい発見や余地があることに気付ける。私にとってなくてはならない時間だと思っています」と語る高石さん。
日常の小さな気付きを綴った文章を通して、倉敷の魅力がより多くの人に伝わることを願っています。
(文/まつこ 編集・写真/悠貴 ロケーション/倉敷美観地区 レンタル着物/着物浪漫)
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