立体刺繍作家「花と刺繍CoRte(コルテ)」インタビュー
春になると、ミモザやスミレ。秋になれば、キンモクセイやどんぐりなど。
身近な草花をモチーフとしたアクセサリーを立体刺繍(りったいししゅう)で作る、「花と刺繍CoRte (コルテ)」。
草花や自然物が好きな作家さんが、ひとつひとつ糸から丁寧に作っています。
笠岡にある海沿いのアトリエで、瀬戸内海を眺めながら製作活動をされる作家「花と刺繍CoRte」。
本物にそっくりで愛らしい立体刺繍、その作品が生まれたストーリーについてお話を聞きました。
目次
海と山がある自然豊かな場所でモノづくりに目覚めた
ーモノづくりを始めたのはいつからですか?
幼い頃からおばあちゃん子で、この祖母の家で過ごすことが多かったんです。
祖母が趣味の絵を描いたり、詩を書いたりする横で、わたしはいろんな廃材を組み合わせて何かを作ることが好きでした。
そういう環境や祖母の影響もあって、ものごころつく頃からモノづくりに触れていました。
変化しない美しさを残したい
ー立体刺繍を作るようになったいきさつについて、お話していただけますか?
もともと、草花や自然物がすごく好きで。
ある草花が赤からオレンジ色に変わるのですが、赤の状態のまま残したいけど本物だとできない。
でも、刺繍なら糸の色で自分の好きなモチーフを一番好きな状態で作品として残せることに気付いたんです。
ドライフラワーなど、経年変化を愉しむ自然物がある一方で、「変化しない美しさ」もまた、かたちにすることができたらいいなと思い、本物に見えるような立体を刺繍で表現するようになりました。
モチーフの形や特徴に合わせて、銅線やビーズなど、基礎となる素材を選んでいきます。
最初はイメージでしかないものも、試していくうちにどんどんかたちになっていくのが楽しくて。
素材を選んで何かを作り出していくという点では、幼い頃のモノづくりが今に繋がっているのかもしれませんね。
祖母から受けついだ、モノづくりの楽しさ
ー「花と刺繍CoRte(コルテ)」の名前の由来について、教えて下さい。
「コルテ」は、ふたつとして同じものがない、機械ではできないような細やかなモノづくり。手作業に凝った(こだわった)手仕事「凝る手」から由来しています。
また、「コルテ」を反対から読むと「テルコ」になるのですが、モノづくりの楽しさを教えてくれた祖母の名前が「テルコ」で。
祖母の魂を屋号にも入れたいと考えていたので、これだ!って思いました(笑)。
そして、最も祖母の魂が詰まったこの家をアトリエとして使っています。
自分の感性のままに
ー刺繍の好きなところ、またコルテさんの刺繍の魅力について教えて下さい。
ひとえに刺繍といっても、さまざまな刺し方や技法があると思いますが、私の場合は線など綺麗に整えようとせず、あえて不規則に色を塗っていくように刺しています。
作品の基礎となる下地布やビーズなどの素材に合わせて、自分だけの法則で余白を埋めるように刺していく作業が楽しいです。
手を動かしていると、自然と頭がフラットになるので、こういう作業をしているときに、ポン!と次のアイデアやイメージが浮かんでくることも多いんですよね。
実際に咲く花に形や大きさがそろっているものがないように、それぞれが少しづつ違うけれど、集まった時にひとつひとつの美しさや個性を引き立たせることができる。
そういうところが、私の作る立体刺繍の魅力だと思います。
当たり前のことがすごく幸せ
ーパっと目を惹くメインの花より、道端にそっと咲く草花にスポットをあてられてますよね。コンセプトについてお話してください。
もともと、色鮮やかで大きく可憐な花より、どちらかというと道端で小さく咲いているような草花が好きで。当初からよくモチーフにしていました。
ここ最近、特に住まいやアトリエの周りを散歩することが増え、以前よりも草花に惹かれているような気がします。
例えば、昨日はつぼみだったけど、今日は花が咲いている、みたいな。
毎日歩く道だからこそ、その小さな変化に気付けたことが嬉しくて。
いつも近くにあるはずなのに、見ているはずなのに、見えていなかった。
そういう日常の当たり前なことが、実はすごく幸せなんだということを、草花から教えてもらいました。
そして、改めて作品や言葉で表現したいと思うようになりましたね。
海と山に囲まれた土地、笠岡の魅力
ーコルテさんが生まれ育ち、住んでいる笠岡。好きなところはどんなところですか?
このアトリエもそうなんですが、海と山が近いところです。
海からも、山からも、四季を感じることができる自然の豊かさがあって。歩けば歩くほど、掘れば掘るほど、好きなところが増えるんです。
ただ、ぼーっと海を眺めたり、山に登って木の実を拾ったり、気づいたら一日が終わってた!なんてことも日常茶飯事で(笑)。
もう、魅了されっぱなしですね。
わたしのすきなもの
ー作家をはじめてよかったことについてお話していただけますか?
私のモノづくりは、その時私が興味のあるものや好きなものの影響を大きく受けるので、作った作品を辿ると、まるで私の生活の記録のようなんです。
分かり易すぎて少し恥ずかしい気もしますが、好きなものに興味を追いかけ続けられていることは幸せなことだなと感じます。
また、モノづくりを通して、作家仲間やお客さんにも出会えました。
今まで独りではできなかったことが可能になり、色々なかたの考えを聞いたり、他のモノづくりに触れることで、腑(ふ)に落ちることが増えたり、自信をもらったり、そこから新しい作品が生まれたり。
出会いが一番大きいかもしれないですね。
ひとり個展「燦歩道(さんぽみち)」
ー2021年8月開催の個展について紹介いただけますか?
2021年8月7日から15日の9日間、福山の雑貨店「tricoter+(トリコテ)」さんで、ひとり個展「燦歩道(さんぽみち)」を開催予定です。
私がいつも歩いている道でみつけた草花をモチーフとした、ブローチやオブジェ、ピアスやイヤリングを展示します。
道端でまばゆい程に光を放っている草花のようす”燦燦(さんさん)と”表現し、”散歩道”をかけて、「燦歩道」と名付けました。
見てくださったかたが、「うちにはどんな草花が咲いていたかな?」と日常を振りかえるきっかけになったらいいなと思います。
散歩をしているような気分で、じっくり見ていただけたら嬉しいです。
自然の色に魅せられて
ー今後についての展望、そして最後にメッセージがあればお願いします。
立体刺繍を始めて、3年目に入りました。
好きが高じて始めた立体刺繍ですが、さまざまな草花や色々なかたとの出会いもあり、いつもワクワクした気持ちと好きなものをを見失うことなく続けられていることが嬉しいです。
最近では、自然物の見た目だけでなく、内に秘められた色にも惹かれていて。
知り合いのかたから学んで、糸の草木染めに挑戦しています。
染めは始めて1年ほどになりますが、使う自然物の種類や採る季節、媒染の種類…などなど、少しの違いで染まる色が変わるので、まだまだ難しいなと思いつつ、日々、自然物の魅力に染まりながら楽しく実験しています。
優しくて柔らかい自然の色をひとつの素材として立体刺繍に表現することができたらいいなぁと、密やかな次の目標にしています。
世界にひとつだけの立体刺繍に触れてみて
「どれがモチーフ?どれが作品?」と思わず聞いてしまうほどの再現度の高い、繊細な立体刺繍の作品。
「花と刺繍CoRte」の作品は、作者のあたたかさと優しさが詰まっているように感じます。
祖母から受けついだ「作ることが好き」という想いを、思い出がつまった祖父母の家でコツコツと製作する、コルテさん。
常に楽しいことを探し、拾い集め、新しい気づきを見つけて、作品につなげる。
なにげない日常にそっと彩りをあたえる「花と刺繍CoRte」の世界に触れてみませんか?
「花と刺繍CoRte(コルテ)」
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▼「花と刺繍CoRte(コルテ)」委託店舗
・みうち雑貨店
岡山県倉敷市本町5-12
・tricoter+(トリコテ)
広島県福山市赤坂町赤坂1214–11
・708号室
北海道旭川市7条通8丁目38-1
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