SIRUHAインタビュー

「SIRUHA」インタビュー〜つなぐ、自由のかたち【笠岡】海の校舎とモノづくり

おだやかな瀬戸内海を一望できる、笠岡にあるシェアアトリエ「海の校舎」。

その木造校舎の一角にある教室を工房とし“書く道具、出掛ける道具”をコンセプトとした道具を作る「SIRUHA(シルハ)」。

SIRUHA 海の校舎

革を使った手帳や、布を使ったミニ財布やかばんなど、シンプルで使いやすいデザインの製品を生み出しています。

SIRUHA

楽しくて、心地よい。そんな道具が生まれたのは、どんな思いから始まったのでしょう。

「SIRUHA」代表の藤本進司さんにお話を聞いたので紹介します。

書く道具と出掛ける道具。生まれたきっかけ

SIRUHA 藤本進司さん

「SIRUHA」代表 藤本進司さん

―「SIRUHA」が立ち上がったのは、どういう経緯からなのでしょうか?

自分が中学生のときには、将来何をしたいのかわからなくて。作るのが好きだから工業高校かな、みたいな感じで高校を選んで、そのあと企業へ就職しました。

印刷機を作る会社で働いていたのですが、約14年前はスマホやiPadの躍進もあり、インターネットでの情報収集が充実してきた頃でした。

SIRUHA 海の校舎

紙媒体の需要が縮小したことで少し暇になりはじめて、「大企業=安定」ではないってことに気付かされました。

需要がなくなっていく製品を作っていること、それによって異動や教育期間が延長されることが多かったこともあり、あまり役に立てている実感が得にくく、やりがいを感じられなかったんです。

仕事において大切なのは、役に立てているという実感だと感じて。

誰かの役に立ちたい、とその経験を通して思いました。

SIRUHA 海の校舎

―役に立ちたいと思ったのは、誰の役に立ちたかったのでしょうか?

ちょうどその時、子どもが産まれるタイミングだったんです。

このままいくと、20年後、30年後に絶望していたんですよ、僕(笑)。それこそ、子どもが大きくなる頃ですね。進歩はしていくだろうけど、楽しい世界じゃなさそう、と思っちゃっていて。

SIRUHA

戦争だって、いつ起きるかわからない。そういう時代の中で、いろんな人が自分の暮らしや生き方の違和感を見直しながら、次の世代に繋いでいきたい暮らしや社会のカタチを作っていけたら、と。

SIRUHA

みんながやりたいことを見つけて実現するために、役に立つもの。その根っことなるクリエイティブなものが活きる道具を作ることで、面白いビジネスを見つけて、みんなが楽しいことをしていければ。

次の世代が少しでも楽しくなってほしい。そういう動きの潤滑油となるような道具作りができたらと思ったのがきっかけですね。

もっと身軽になって、お出掛けしてほしい

SIRUHA 藤本進司さん

―「SIRUHA」のコンセプトと、商品についてご紹介をお願いします。

書く道具、出掛ける道具というのをコンセプトとしていて、書くためのシステム手帳や出かけるためのかばんを作っています。

定番のシステム手帳は、ポケットサイズの手帳。旅先で出会った人や自分が思い出したことをメモしていると、興味があったり大切と感じることがわかってくるんですよね。自分の軸が見つかるというか。

SIRUHA

書く道具を使いやすくデザインしたい。出掛けることで書くための刺激や情報が得られるから、出掛けることが楽しくなるようなモノを作りたいな、と。

書くことと出掛けることの習慣が根付くようなモノづくりがしたいと思いました。

SIRUHA

手帳だと、常に持ち歩けるポケットサイズ。

アイデアはすぐ忘れるので、ポケットからすぐ取り出せて、ブックマーカーをつけて常に新しいページを開けるようになっていて。

海の校舎 笠岡

余計なノイズがあると考えることの邪魔になるので、カードポケットを省いたシンプルなものになっています。そのことによって、段差がなく書きやすいんです。

アイデアはリラックスしたときに浮かびやすいので、グリーンを定番カラーにしています。

SIRUHA

また、ミニ財布は手前のポケットに小銭が入るようになっていて、その後ろにカードやお札が入るようになっています。

SIRUHA

コンパクトなお財布で、身軽になってほしい。創業当初から同じデザインで作っていて、約2万個出荷しています。

買い替えやすい価格帯で、気軽に使ってもらえる。シンプルに見えるけど、使いやすいデザインにしたモノづくりにこだわっています。

でも、理想のモノづくりとしては、家庭で作れるような、普遍的で作りやすいデザインのもの。

自分しか作れないものではなく、誰にでも作れるようなシンプルなものを目指しています。

SIRUHA 海の校舎

手仕事はもうちょっと暮らしやモノづくりの場所へ還ってきたらいいのかな、と考えていて。

大量生産のモノより、昔の民藝のように自分の家族のために作ったモノのほうが、やっぱりいいんですよね。

僕も手縫いで商品を作るとき、新しいデザインはどうしようかとか考えたりしながら作業しています。

その時間が一番、好きですね。

やりたいことを見つけるための、役に立ちたい

SIRUHA

―シェアアトリエ「海の校舎」やクラフトマルシェ「うみの市」などのイベントで、直接手に取るひととお話する機会があると思います。そのなかで印象に残ったお話や嬉しかった言葉など、教えて下さい。

初めましてでミニ財布を購入してくださったかたが、この海の校舎へ来てくれて。

「手ごろな値段でかわいいから、このミニ財布を買いました。実際使用したらとっても使いやすかったので、今ではメインの財布として使っています」とお話してくれたんです。

SIRUHA

また、ネット販売で手帳を購入してくださったかたからは、メッセージや手紙が来ることもあって。

「この手帳を使ったら自分のやりたいことが明確になって、自分の事業がスタートしました」って話を聞いたときは、非常に嬉しかったですね。

実際に使ってみてよかったという“声”を聞けると、この事業をやってよかったなって思います。

SIRUHA 藤本進司さん

モノづくりだけにこだわっていなくて。いろんな人とお話する機会をもらって、その人たちのやりたいことがちょっとでも見つかってほしい。

自分の商品を購入する、しないに限らず、「SIRUHA」でやってることを通して、やりたいことを見つけるための役に立てたら、嬉しいですね。

新しい可能性を見せてくれる場所「海の校舎」

海の校舎 笠岡

―このシェアアトリエ「海の校舎」は、藤本さんにとってどんな場所でしょうか?

やりたいことがある人がもっと近い距離で、いろんな情報を共有しながらモノづくりや、やりたいことをやっていけたら面白いな、と思っていて。

海の校舎 笠岡

せっかくなら、自分の事業をやりながらその活動を通して、地元・笠岡の地域がずっと人が安心して暮らせる地域であり続けるための役に立てたら嬉しいと思っています。

この「海の校舎」を始めることによって、新しいつながりや視点が生まれて、やりたいことができる可能性が広がりました。

SIRUHA

それこそ、コラボ商品が生まれたり。シンプルなデザインだからこそ、いろんな作家さんたちに遊んでもらって、アレンジしてもらえたら。

お互いのお客さんがお互いのブランドを知ってもらうきっかけにもなりますしね。

SIRUHAxBUTTON ミニ財布

CAFE BUTTON」とのコラボ財布

ここから見える景色も良いですよね。しんどい時やきつかった時に、もう少しがんばろうと思える。

入居希望者のかたを案内することもあって、最初はなんとなく知って見に来たというひとが、この「海の校舎」に来るとスイッチが入るんですよね。

自分自身もそう思ったのですが、そういう魅力がここにはある、と。

海の校舎 笠岡

ここは、いろんな価値や可能性を見せてくれる場所、ですね。

コラボレーションや、イベントが生まれたり。

「海の校舎」で開催しているクラフトマルシェ「うみの市」。最初はイベント運営経験がないメンバー5人で企画をし、問題だらけだったんです。

うみの市 海の校舎 笠岡

でもイベントのチラシや看板などは、入居者でもあるデザイナーのかたが担当し、わかりやすさに特化していて。

いろんな業種の事業者のかたが増えて、やりたいことがもっとできるようになって、回を重ねるごとに改善しています。

地元・笠岡の魅力とは

海の校舎 笠岡

―ご出身の笠岡の好きなところはどんなところでしょうか?

笠岡って、特に日本一、みたいなところはないんですけど。

適度に人もいて、海や山もあって自然豊かなんですよね。自分にとっては十分と思っていて、一通りそろっている。

なので、笠岡にとても満足していて、今のところ人生のほとんどの期間を笠岡で暮らしてきました。身近なところもにいろんな刺激があります。

海の校舎 笠岡

本当に移住したいと思っている人たちに、笠岡の空き家を可能性があるうちに、もっとうまく使ってもらえたらいいな、とも思いますね。そういう動きが起きたらいいなと。

SIRUHAのこれからについて

―今後、挑戦してみたいこと、やってみたいことについて教えてください。

より良いモノづくりをしながら、もっと根っこの方にある自分のやりたいことをできていけたら。事業の幅も広げていきたいなと考えています。

“書くと出掛ける”ことにテーマに絞っていますが、それ以外にもさまざまな人の良い習慣があります。

SIRUHA

暮らしに馴染むような、新しい習慣を作る道具づくりができたらいいな。今は布と革を使ったモノだけですが、木や金属を使ったモノなども展開していきたいですね。

SIRUHA

また、モノづくりをもっといろんな人に体験してもらって、身近なものに感じてほしい。

僕の起業の経験を、みなさんの考える材料にしてもらうような発信もしていきたいと思っています。

インタビューを終えて

海の校舎 笠岡

筆者も愛用している「SIRUHA」のミニ財布。

インタビューのきっかけは“人を選ばない、シンプルで使いやすいアイテムは、どうして生まれたのか”でした。

SIRUHA ミニ財布

「父親がトラック運転手で、昼夜問わず働いているのが大変そうに感じて…」

「そのことにもちろん感謝はしているけれど、理想としては、楽しい仕事の先に次の世代の心地よい暮らしがある。そんな循環の方がいいなって思います」とお話してくれた藤本さん。

SIRUHA 藤本進司さん

みんながそれぞれの視点でこれからの暮らしを想い、心地よい社会を作っていく役に立ちたい。

そんな想いから、よし手帳を作るぞ、と始まった事業。

うみの市 海の校舎 笠岡

本来の自分は、もっと“自由”であってもいい。

そんな手助けをしてくれるアイテムを製作する「SIRUHA」の願いは、大切なひとを想う優しさで満ちあふれています。

自由に楽しく“書く”ことでつなぐ、これからの良い暮らしについて考えてみませんか?

(文/まつこ 編集・写真/悠貴)

「SIRUHA(シルハ)」

▼ホームページ

SIRUHA

▼Instagram(インスタグラム)

SIRUHA(@siruha) 

 

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